東北弾丸遠征(前編)──片道2,000円で秋田まで全日空に乗るの巻

2022年11月、全日空は創立70周年を記念し、11月29日から12月1日に対象期間(2023年1月5日~2月28日)の国内線航空券を7,000円で販売するという破格の安売りを実施。これには趣味者一同大騒ぎの中、私は疑念に駆られていました。

7,000円って安いの?

 

知る人ぞ知る私の伝説的発言「博多って北九州?福岡?」*1からもお察しいただけるよう、本州のごく限られた地域の鉄道にしか詳しくない私は人生で一度も飛行機に乗ったことがなく、このANA7,000円セールがどれだけ安いものなのか見当がつきませんでした。しかし知り合いに聞いても、返ってくるのは「どう考えてもぶっ壊れ」という答えのみ。

確かに、格安航空に比べて全日空日本航空が割高なことは知っているのですが、それでも飛行機に乗ったことがない身としては「もう少し安く買えないものか?」と思案していました。この機会を逃すと、将来飛行機に乗ることになった際「でも、飛行機に乗ったことがないという実績が崩れてしまう……」という謎の逆張り精神が働いてしまいそうになるのが嫌だったのです。いっそ格安航空も漁ってみるか、と考えていたその時。

 

大館能代空港キャッシュバックキャンペーン 【楽天トラベル】

あるやん。

 

乗るやん。

 

というわけで、本来の用途としては初めて羽田空港にやって来ました*2。羽田から大館能代空港までを7,000円、空港使用料370円、しかし大館能代空港キャッシュバックキャンペーンで片道2,370円という破格のフライトです。初めての空港利用なので、備忘録も兼ねて簡単な飛行機の乗り方を記録しておこうと思います。

羽田空港は第1・第2・第3ターミナルの3ターミナルがあります。第3ターミナルは国際線の便が発着し、第1・第2ターミナルは国内線が発着します*3。第1・第2ターミナルの違いはずばり、発着する航空会社にあります。(国内線の)JAL日本航空)は第1ターミナルANA全日空)は第2ターミナルといった具合に、会社ごとに発着場所が定められているのです。

 

駅の案内に従い、予約した飛行機が出発する第2ターミナルを目指します。案内は色分けされており、京急蒲田駅側(これまでの進行方向と逆、最後尾)が赤色の第1ターミナル羽田空港駅側(これまでの進行方向、先頭側)*4青色の第2ターミナルです。この充実した案内で逆のターミナルに行ってしまうようでは、飛行機に乗るのは諦めましょう。

 

そのままエスカレーターを上り、正面の改札を出ます。曲がる必要はありませんが、途中右手にローソンがあるので買い物をし足りない方はそちらでも出来ます。

 

真正面にある、「国内線出発 2F」と書かれた上りしかないエスカレーターを上ります。大きな吹抜になっており、これから空を飛ぶんだなという高揚感に包まれます。

なおこのエスカレーターの右奥には「国内線到着 2F」と書かれた上下エスカレーターがありますが、これは出迎えのために空港にやって来る人のために到着ロビーへ誘導する動線ですので、お間違えなきよう。

 

エスカレーターを上った先にある大型発車標で、保安検査場と搭乗口を調べます。私が今回乗るのは08:55発の大館能代行きなので、保安検査場は「B」、搭乗口は「61」ですね。

しかしこの発車標も2023年2月に撤去されてしまい、小型の発車標かお手持ちの電子機器で確認する方式になるようなので、じゅうぶんお気をつけください。不明なことは現地の係員に聞くのが良いでしょう。

 

今回は2023年3月をもって終了する「SKiPサービス」を利用し、事前に2次元バーコードを発行しました。このバーコードを各所にかざすことでチェックイン代わり、搭乗券代わりになります*5。4月以降は「オンラインチェックイン」というサービスに変更するようですのでご注意を。

 

旅行慣れしている方や荷物の少ない方はそのまま保安検査場に行けばよいのですが、今回私はすぐ取り出したいものを入れる用のショルダーバッグと、着替えや非常食を詰め込んだリュックサックの2つ手荷物を持ってきています。機内に持ち込める手荷物は、定められた大きさや重さを満たした1点のみなので、重要度の低いリュックサックを預けます。乗ったことがない人でも想像がつくと思いますが、到着した後ベルトコンベアのように荷物が流れてくるアレとして流れてきます。

チェックインが済んでいない方はこの手荷物を預けるのにも搭乗券や2次元コードが必要になるため、迅速に済ませましょう。飛行機に手荷物を搭載するのにももちろん時間がかかりますから、手荷物預かりは出発30分前までとなっています。

 

手荷物預かりを済ませると、いよいよ保安検査場です。金属探知機を通るアレです。発車標で確認した通り「B」の検査場に並びます。ここは出発20分前に通過する必要があります。上着や手荷物をすべて預け、体に何も身に着けない状態で金属探知ゲートを通過しなければなりません。何も身に着けないからって全裸にはならないでくださいね。

スマートフォンや家の鍵、モバイルバッテリー*6などは身に着けず、この段階で手荷物の中や上着のポケットなどに入れておくとスマートです。

ゲートを通過した後は、預けた上着・手荷物が検査を抜けるまで待ちます。スマホや鍵程度の金属には反応しませんが、私はショルダーバッグに入れていた一脚が反応し手動検査送りにされ恥ずかしい思いをしました。長さはギリギリ持ち込み可でしたので九死に一生を得ましたが、盲点でしたね。

 

保安検査場を通過したあとは搭乗口に向かいます。運良く、検査場を抜けてすぐの搭乗口が61番だったためほとんど移動せずに済みましたが、場所によっては動く歩道が整備されているほど遠い場所もあるようですね。周辺には出発10分前に集合する必要がありますから、早めの行動を心がけたいです。

 

搭乗口周辺で待機しますが、整備遅延のため搭乗予定時刻は未:定に。飛行機ではあるあるらしいですね。

 

いざ飛行機へ搭乗。搭乗口と飛行機が直結していたのは驚きでした。一国の大統領が階段を使って降りてくるような感じで滑走路を歩くと思ってましたが、よくよく考えたらめちゃめちゃ危ないしバリアフリーの欠片もないですね。

 

というわけで案内された順番で飛行機に乗り、指定しておいた座席に着席。これだけで機種の分かるスゴ人種はいらっしゃるんでしょうか。あとは出発を待つだけです。

 

と、ここで旅の高揚感からふと我に返ります。なぜ私がこれまで頑なに飛行機に乗ってこなかったか。

 

高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い高い

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ

 

えっ、雲より上行くの????????

 

900km/hで高度7000m走ってんの????

 

もう着くの????

 

めっちゃ速いけど良いの???????

 

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ

 

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…………

 

死んでない……

 

10時10分。羽田からわずか1時間ちょっとで大館能代空港に到着しました。

早すぎませんか???1度でも飛行機に乗れば恐怖が薄れると思ったのですが、新幹線でさえ数時間かかる距離をこんなにも爆速で結んでしまうという事実を身をもって体感し、かえって恐怖心は増大してしまいました。何あの乗り物、怖すぎるんだけど。

 

ベルトコンベア付近で手荷物が流れてくるのを待ちます。大館能代空港は羽田行の飛行機が1日3往復しか発着していないトンデモ空港なので、どのベルトコンベアで待てばいいの?とか、そんな心配はありませんでした。羽田で預けた段階で手荷物の整理番号が貰えるので、きちんと保管していれば取り違えもなく受け取ることができます。

 

地方空港ってどこも空港からの公共交通機関が貧弱な印象が強いのですが、この大館能代空港もご多分に漏れず「飛行機に合わせた時刻に3往復運行するリムジンバス」しかありません。大館駅方面にしか向かわないので、能代駅方面へ直接向かうこともできません。どうなってんの。

 

なお、日付は1月27日(金)。数日前より、北日本だけでなく全国を10年に1度の強烈な寒波が襲っており、瀬戸内海にほど近い神戸付近でもドカ雪となるなど寒気に包まれていました。つまり、東北地方はそれよりも更に寒いということ。この日は最高気温が-1℃、ずっと氷点下という過酷な環境の中生き延びねばなりません。うっかり1年の最も寒い時期かつ10年に1度の寒波の襲来中に来てしまいました。予約した時に興奮で極寒であることを忘れていたのです。

 

リムジンバスを鷹ノ巣駅(たかのすえき)停留所で乗り捨て、秋田内陸縦貫鉄道鷹巣駅にやって来ました。JR奥羽本線鷹ノ巣駅とは駅舎が別で設けられていますが、かつて国鉄阿仁合線(あにあいせん)だった名残でホームも線路も繋がっています。

 

ホームには味わい深い古~い看板がありました。当駅から角館まで1本で繋がったのが1989年であるため、その頃に設置されたものと思われます。

 

こちらは秋田内陸線の普通運用に充当されるAN-8800形。9両在籍しており、お座敷化改造を受けた1両を含め9両全てが異なる塗装で運行されており、このAN-8803はオレンジ色となっています*7。個人的には楽しい要素だと思いますが、ランダム性が高すぎて特定の車両を狙うのは難しいですね。

 

鷹巣駅窓口で購入したのは「秋田内陸ワンデーパス」。2,500円で全線乗り放題のお得な乗車券です。ほか、3,500円で2日間乗り放題の「ツーデーパス」や、誕生日の前後3日間のみ1,500円で購入できる「バースデーパス」、片道だけ有効で1回だけ途中下車可能な1,800円の「片道寄り道きっぷ」など、豊富な企画乗車券が販売されています。ただ片道を乗り通すだけであれば、単純に鷹巣から角館までのきっぷが1,700円と最安値となっており、考えられたお値段となっております。

 

かつて国鉄だった名残で、合川・米内沢・阿仁前田温泉・阿仁合にはホーローの駅名標がそのまま残されているのを確認しました。だんだんと文字が掠れてきていますが、見えなくなるその日まで役目を全うしてほしいですね。

 

中でも、2021年3月に駅名を改称した阿仁前田温泉駅では、阿仁前田時代のホーローが1枚そのまま残されていました。鷹巣側、ホームからしっかし撮影するのは難しいほど遠くの電柱にあります。当時の担当者はなぜここに貼り付けたのでしょうか??

 

終点の阿仁合駅に到着。阿仁合線開業時の終着駅で、秋田内陸線の車庫が併設されており現在でも運行上の拠点になっています。

 

駅舎は1989年に改築されたものを2018年にリニューアルしたもので、「しあわせのえき」という愛称がついています。

 

駅近接の資料館には、歴代ヘッドマークや線内の歴史を当時の新聞記事とともに紹介するような伝承が大切に保管されていました。

 

大迫力の駅舎モニュメント。ホーローもしっかり再現されています。

 

折り返し、12時17分発の急行もりよし2号鷹巣行で鷹巣まで戻ります。本来は50km以内の急行料金160円が別途で必要な列車ですが、ワンデーパスを買えば急行料金は不要なため、ちょっぴりおトクな気分になりますね。

 

13時07分、爆睡していたので一瞬で鷹巣に到着。往路の普通とほとんど所要時間は変わりません。

 

次の列車まで時間があるため、鷹巣町を散策。北秋田市出身の中島聡監督率いるオリックスが2022年に日本一となったことを祝う垂れ幕があちこちに掲出されていました。地元に愛されてますね。野球ファンの方にとってはオリックス日本ハムのイメージが強い方も多いでしょうが、実は2003年に1年だけ横浜ベイスターズでプレーしていたこともあります。数年後のキャッチャーのゴタゴタを考えると、この時に手放さなければ……なんて考えてしまいますね。

 

全日本こんなところに国際興業バスシリーズ、秋北バス編。かつて国際興業グループだった名残で、多くの国際興業塗装バスが走行しています。私と同じように埼玉からやって来た車だと思うと、老後を田舎でのんびりと暮らすようでちょっと感慨深いですね*8(?)

 

側面は信じられないくらい剥げてました。老いすぎでは。

 

駅に戻ると、ちょうど駅前広場の除雪作業中でした。勝手に消えてくれる量ではない雪を、行政がしっかりと除雪する。駅前だけでやっているのかもしれませんが、それでも素晴らしいですね。

 

再び秋田内陸線へ。14時38分発の急行もりよし3号に乗車し、一気に角館まで駆け抜けます。車内には観光案内を担当するアテンダントさんが添乗し、車内販売も行っていました。車両こそ普通のAN-8800形ではありますが、かなり力が入ってますね。

 

秋田内陸線は、元々国鉄鷹角線(ようかくせん)として開通予定だった阿仁合線・角館線を未開通のまま継承した第三セクター路線で、1989年に新線区間29.0kmの開業をもってようやく全通したという特殊な経緯を持っています。この急行もりよし号は全通当時から走っている歴史ある列車なのです。アテンダントさんは臨機応変にアナウンスしてくださっており、「連日の寒波により、川に氷が張っている貴重な光景をご覧いただけます」などといった特殊な案内も。とにかく寒かったですが、良いものが見れました。

 

16時35分、もりよし号は田沢湖線秋田新幹線の接続駅である角館に到着。この駅名標仙北市の誕生が2005年なので設置から20年経っていないはずなのですが、かなり劣化が進んでしまっていますね。

 

ここで大曲方面に抜けるのですが、田沢湖線はこまち街道。こまちが停車するだけマシなのですが、これに課金する意欲もないため角館駅で2時間ぼーっとしながら普通列車を待ちます。読書とゲームをしていると思いのほかあっという間でしたね。

 

18時45分発、普通大曲行の701系5000番台に乗車します。尾灯が上部に設置され、ラインカラー部分がまっさらになっているのが、701系標準軌仕様の大きな特徴です。新幹線の在来線とは線路の幅が違うため、専用の車両を用意するにあたり外観で判別できるようにしたかったのかもしれません。

 

大曲駅に到着。ついでに当駅で使用されている東海道型放送を録りたかったため、新幹線ホームに。100km以内の片道きっぷだったので、有人改札から入りました*9。この駅はかつて「まもなく、x番線に、○○方面行、こまち号が、到着します」という文面で列車の接近を案内していましたが、現在のE6系が登場当初「スーパーこまち」を名乗っていたため「まもなく、x番線に、○○方面行、秋田新幹線、到着します」とパーツ差し替えで対応。以後そのまま、もう両手で数えられる程度になってしまった数少ない東海道型使用駅として残っているのです。

 

奥羽本線に乗り換え、本日の最終目的地・横手を目指します。新幹線ホームを出て3分での乗り換え、ホームはとても走れる状況ではないのでちょっと危なかったです。

 

味のある駅舎をもつ飯詰駅後三年の役の古戦場である後三年駅を経由し列車は横手駅に到着。ツーマン列車のみ扱う当駅限定のご当地メロディ「青い山脈」を収録したのですが、音量が大きすぎて帰って聞いてみたら音割れてました。悲しい。

 

横手周辺はしっかりと栄えており、マクドナルド・スターバックス・丸亀製麵などのチェーン店が揃っています。以前より190円で購入し温めていたサイドメニュー引換券でポテトLを交換し、チーズバーガー・チキンクリスプで夜ごはん。これで占めて510円というのは値上がりの影響をもろに感じてしまいますが。

 

こちらも駅前の好立地にある快活CLUBで1泊。暖まりながら翌日の始発を待ちます。明日の目的地は仙台です。

 

次回 片道-4,500円で埼玉に帰るの巻

ある事件が発生。旅程変更に旅程変更を重ねました。

 

 

*1:私はこの発言を伝説だとも何とも思ってないし今でも一瞬どっちか分からなくなります。

*2:ポケモンスタンプラリーのために東京モノレールで来たことはありました。

*3:第2ターミナルは国際線の発着も一部あり。ここがややこしい。

*4:横浜方面から来る場合、京急蒲田で方向転換します。横浜方面から予め先頭・最後尾に張っておくと結果的に逆側に誘導されるので注意。

*5:今回私は支払いをコンビニ(ファミリーマート)で済ませたため、搭乗券代わりの受領証を持ち歩いていました。ここに記載されている確認番号・予約番号を公式サイトで入力することにより、バーコードを発行しました。

*6:モバイルバッテリーは別途持ち込める条件が決まっているのでご確認ください。

*7:8801は黄、8802は紫、8804は内陸線標準、8805は紺、8806は赤、8807は青、8808は秋田マタギ号としての専用塗装、8809は黄緑。

*8:練馬とかは誤差。

*9:退場時に150円お支払い。