春の西日本侵略②──波にぷわ、身をあずけ

岡山駅の写真を眺めていると、岡山に行きたくなりますね。きびだんごがなくとも餌付けされてしまっているようです。八川です。

 

「どこまで4days」で3日間特急を乗り回す西日本旅行、前回は16時台に普通列車岡山駅まで下っていたところで終わりました。ここからは伯備線の陰陽連絡特急「やくも」で山陰を目指します。

やくもは日本最後の国鉄電車による定期特急列車として大きな注目を浴びており、10本*1中2本がリバイバル塗装に。2022年に国鉄特急色が復活し、2023年には往年のスーパーやくも塗装が復刻。今回は復刻されたばかりのスーパーやくも塗装の列車に乗車します。固定運用なので確実に当たります。

 

しかし、この日はスーパーやくも塗装4両の中間にあたる2・3号車には、増結用であるゆったりやくも塗装の車両が組み込まれています。つまり色編成です。これは偶然ではなく、運用と車両塗装順序の都合上生まれたもので、2月20日から3月15日までの期間限定の措置として発表されていました。つまりこの日、この運用が混色の最終列車なのです。明日からはスーパーやくもに塗り替わった増結車両を組み込んだ完成形での運転となりますが、こんな楽しい形態に乗らないわけにはいかない!ということで乗車を決めたのでした。

 

17時05分、岡山を出発。車内は至って普通のやくもですが、広告表示にはスーパーやくもが現役バリバリ最前線だった頃の写真が収められていました。また、当時の再現要素として車内チャイムには電子オルゴールの鉄道唱歌を使用。これは音鉄にはたまりませんね。

 

なお、381系はいわゆる"振り子式特急"で、カーブの際に車体を傾斜させることで減速せずに高速運転することができる技術を搭載しているのですが、酔う人はかなり酔うようで、洗面台にはエチケット袋が備え付けられていました。気分が悪くなる前提の仕様になっています。配慮はありがたいんですけどね。

 

混結最終運用にもかかわらず車内は空いており、米子でほとんど下車してしまいました。終点までこの車両に乗車していたのは4人だけ。もうちょっと人がいるかなあと思っていたのでちょっと意外でしたね。

 

出雲市駅に着くころには外は真っ暗。最終運用を終え車庫に戻り、翌日からは中間車を入れ替えて"完全体"と姿を変えます。先頭車はパノラマグリーンと呼ばれる展望車両で、JRになってから先頭車化改造された形式となります。個人的には「スーパーくろしお」のイメージが強いですね。

 

6号車はごく普通の381系です。外が真っ暗ですし、なるべく国鉄時代に近い姿の車両に乗車したかったので今回は最後尾のこちらを選択しました。スーパーやくも塗装なのに国鉄らしさを求めるというのも矛盾していますが、JR初期の雰囲気を求めていると言えばなんとなく私の好きな時代が伝わりますかね。

 

側面。国鉄特急色をオマージュした前面塗装の側面処理と「SUPER YAKUMO」の90年代感がたまらないですね。やくもにはもう1色、緑と灰色を基調とした「やくも」色*2があるので、そちらの復刻にも期待したいところです。

 

そんな「やくも」は2024年から新型車両である273系に置き換えられることが決定しています。個人的には塗装ではなく前照灯が気に入らないんですが、実車が出れば手のひら返ししてそうな気がします。将来的にはこの車両に381系塗装復刻とかやったりして。

 

隣のこちらはHoneyWorks関連のアニメ「ヒロインたるもの!」です。主人公の女の子・ひよりが出雲出身ということで出雲市とコラボしているようですが、実際にアニメに登場するのはほとんど東京です。

 

出雲市からは、普通米子行きで山陰本線を戻ります。途中、下り列車の遅延が影響し直江駅での交換予定列車を荘原駅で待ち合わせる変更があり、ホームに降り立ったところ外国人の方から「松江?*3」と言われたため、「イェス、ディスイズ松江!」と返答し人助けをしました。良いことをすると気持ちが良いですね。

 

22時30分、米子に到着。ここからさらに山陰本線を上ることもできますが、この日は米子に泊まります。行動だけ切り取ると、やくもで降りるつもりが寝過ごして普通列車で戻ってきた人のそれです。

 

米子駅すぐ近くのラーメン屋さんは看板がひっくり返っていました。一時期首都圏で腐るほど見た上下反転の広告を思い出します。そういえば、去年の12月に鳥大でも牛骨ラーメンを食べましたね。調べたところ鳥取のご当地B級グルメだそうです。美味しいからもっと有名になっても良いんじゃないかなあ。

 

おはようございます。3月16日(木)、とうとう最終日となりました。おおよそ最終日のスタート地点とは思えませんが、最終日です。石見神楽ラッピングをしながらも島根から遠ざかる悲しい倉吉行が本日の初電です。

 

倉吉は、アニメやってそうでやってないコンテンツランキング2位*4と勝手に決めている「ひなビタ♪」の聖地として積極的にコラボしています。行先としては良く聞きますが、米子と違って一般的な知名度は低い気がするので、良い取り組みだと思います(雑)

 

倉吉からは始発の「スーパーはくと」に乗車します。智頭急行線を経由して陰陽連絡を担う特急で、全ての列車が京都駅まで直通します。いつか乗った「はまかぜ」よりも速い・安い・うまい(自動販売機があるので)と3拍子揃って優れている気動車特急です。なお「どこまで4days」は智頭急行線も範囲内になっているので、追加料金は不要です。

 

夜明け前の山陰本線を駆け抜け、鳥取からは因美線に入り、智頭からは智頭急行線に直通して陰陽を縦断します。鳥取は6時34分発。はまかぜ2号*5鳥取を6時ちょうどに出発していますが、こちらのほうが先回りして姫路~大阪へ先に着くことになっています。

 

ダイヤ通り動いてくれればの話ですが。

 

貨物列車が踏切で立ち往生してしまったため、智頭急行を抜け山陽本線に入った途端大幅に減速。複々線区間では普通列車に抜かれるなどし、結果的に60分遅れとなってしまいました。前日のくろしお遅延は楽しめましたが、この日は焦っていました。乗り継ぎの列車に間に合うけど、間に合わなくなるからです。

 

本来の到着時刻である9時53分から長針が一回りし、10時55分ごろ京都駅に到着。新大阪からはかっ飛ばしましたが、普段から速い区間では遅延回復することは困難なようですね。

 

京都からは数分遅れのサンダーバード17号に乗車。1日1往復の和倉温泉直行便です。本来であればスーパーはくとで京都着後、新快速で大阪に戻りサンダーバード17号に始発から乗車するという旅程だったのですが、余裕時分が完全消滅したため京都からの乗車を余儀なくされました。間に合わなくなるよりかはマシなのかもしれません。

 

なぜか15号よりも先に17号がやって来てしまったため、自由席を中心に車内は大混雑。指定席を確保していたため悠々自適な特急生活を送ることができましたが、「15号の指定席をお持ちのお客さま、指定車にお座りいただいて構いません」とアナウンスされていたため、大阪から私の席に座られていたら面倒でしたね。

 

敦賀を過ぎてから混雑はマシになり、金沢で客がまるまる入れ替わりました。

金沢~和倉温泉は独立した特急「能登かがり火」が走行しており、系統が分断されるのも納得の流動です。

 

14時30分、和倉温泉駅に到着。気づけば能登半島、石川県に初上陸です。JR西日本の様式で所在地が併記されている駅名標は非常に珍しく、他の温泉駅にちょっとだけあるだけだそうです。

 

特急の到着に合わせて大量のバス・ツアーガイドが待機しており、観光客をかっさらってすぐに出発していきました。ここが目的地なら私も乗っていましたが、今日はただ特急に乗りに来ただけだったので置いてきぼりです。

 

駅から温泉街までは距離があるため、一般向けの駐車場も用意されています。和倉温泉駅より北は第三セクターのと鉄道の管轄なんですが、のと鉄道の利用客は使っちゃいけないんですかね。

 

和倉温泉からは、そんなのと鉄道からやって来た七尾行の普通列車で移動します。元々は全線がJRの管轄だった七尾線和倉温泉以北がのと鉄道に移管されましたが、七尾~和倉温泉駅間に限ってはJR西日本のと鉄道の共用区間となっており、のと鉄道七尾線の列車はすべて七尾駅まで乗り入れます。

 

七尾駅です。こちらは駅前から栄えており、ただいま絶賛放送中のテレビアニメ「君は放課後インソムニア」の舞台にもなっております。のと鉄道七尾線の奥にあった能登線の終端・蛸島も「スキップとローファー」の主人公の故郷として「東京に行く時には列車を追いかける友達を窓から見送りたかったが、地元の鉄道は10年以上前に消えた」という思い出とともに登場しています。蛸島には放置されっぱなしの保存車両もあるそうです。今度はここを目的地にしたいですね*6

 

JR七尾線に乗り継ぎ、金沢駅まで戻ります。この列車が発車する前に「能登かがり火」の金沢行が先発していますが、せっかくなら普通列車にも乗りたいなあと思いあえてこちらを選択しました。接続列車に影響はありませんし、お金も浮きますからね。

 

金沢駅に戻ってきました。右上のマークはIRいしかわ鉄道のものです。2015年に北陸新幹線が金沢まで開業した際、金沢以東の北陸本線第三セクターに移管されました。このうち石川県の区間を管轄するのがIRいしかわ鉄道で、津幡から分岐している七尾線は孤立した路線になってしまいました。

ちなみに、今回使用した「どこまで4days」は通過利用に限り金沢~津幡駅間のIRいしかわ鉄道乗車が認められているので、こちらも追加料金は発生していません。

 

金沢駅といえば、駅前に鎮座する大きな鼓門ですよね。何かこういう形の伝統的な建物があるのかと思いましたが、説明文を見る限りそういうわけでもなさそうでした。しかしこの門自体にブランドみたいなものが生まれていますから、これを見るだけでも「金沢に来たんだ!」という気持ちになりますね。

 

これにて「どこまで4days」は終了。金沢からは北陸新幹線で関東に戻ります。金沢から大宮を2時間ちょっとで結んでしまうかがやき号です。速すぎて感動がないくらい速いです。サンダーバードで通過した福井と、この列車で通過した富山はどちらも初めての地でした。両県とも機会を作って降りたいものですが、自分の中ではずっと二の次になってます。

 

しかし、金沢駅で購入した駅弁は降り立ってもないはずの富山名物・ますのすし北陸新幹線コーナーにあるのが悪いですよね。だってサーモンって旨いじゃないですか。うん、しょうがない。キハ120形がいるし近いうち行く、ということにしておこう。

 

あっという間に大宮に到着。旅の終わりだけで1日かけるのも面倒ですが、あっけないのもちょっと考えものですね。まさに一長一短、はくたか号ぐらいがちょうどいいかもしれません。

東海道新幹線から始まり、南紀・山陰・北陸を観光せず突っ走った特急づくしの贅沢な3日間はこれにて終了です。車内放送は、そもそも収録を想定していなかった東海道新幹線を除いて無事に録ることができたので満足でございます。

 

おまけ。在来線ホームに降り立ってすぐ、まだ収録できていなかった夜のスワローあかぎ号を回収しました。さっきまで西日本特急を乗り回していたのはどこの誰だったのか、聞き馴染みのあるATOS放送で一気に現実へ引き戻されたのでした。

 

なお、この特急乗り回し旅行についてはこれにて完結ですが、「春の西日本侵略」シリーズでは引き続き東海道線すごろく終了後の4月3~5日にかけて行った西日本旅行を書いていきます。18きっぷ5日連続使用の珍道中ですが、よろしければ最後までお付き合いください。

*1:厳密にはメインは8本、サブが2本に増結用の編成が何両か在籍。

*2:速達便が「スーパーやくも」愛称で走っていた頃、普通の「やくも」を中心に運用。

*3:この列車が松江に行くかどうかを聞いたと思われる、というかそれ以外だとマズい。

*4:1位はよつばと

*5:2023年3月改正で城崎温泉始発に変更。代わりに4号が鳥取始発となり12時57分発に。

*6:本ブログの常套句。