西日本私的遠征②──遅きこと、はまかぜの如し

2022年12月27日夜。いま、私は長年の念願だった特急列車に乗車し、一路山陰を目指しています。八川です。

 

前回までのあらすじ。京阪大津線で"好き"を叶えた八川は、次なる"好き"を求めて大阪駅へ。通勤客の帰宅時間帯真っ只中、喧騒をかき分け入線してきたのはたった3両の気動車特急「はまかぜ」です。

 

特急「はまかぜ」は大阪~鳥取駅間をJR神戸線播但線山陰本線経由で結ぶ特急列車で、1日あたり3往復が運転されていますが全区間を走破するのは1往復のみで、もう2往復は鳥取まで向かわずにそれぞれ香住・浜坂止まりとして運転されています。

冬季運転の「かにカニはまかぜ」も浜坂発着となっており、今回乗車する18時04分発の5号のみが鳥取までを1本で結んでいます。浜坂から鳥取の間を通過運転するのはこの1往復のみです。

 

なぜ鳥取までの列車が1往復しか運転されていないかというと、より早い智頭急行経由の特急「スーパーはくと」が2時間おきに出ており、大阪・鳥取間の輸送では出る幕がないためです。そのため「はまかぜ」は播但線山陰本線の主要駅を結ぶ役割を担っていますが、大阪から一大観光地である城崎温泉までは福知山線経由の「こうのとり」を利用する客が大半であるため、非常に珍しい「短距離輸送に特化した特急」として陰陽を駆け巡っているのです。

 

姫路まではJR神戸線の主要駅に停車し、ここまでは通勤特急としての役目を果たしながら徐々に客を降ろしていきます。播但線に入り方向転換し山陰を目指しますが、播但線内の駅にもしっかりと停車します。

 

ここで今回使ったきっぷをご紹介。本日は特急に乗車するということもあり、18きっぷではなく通常のきっぷを発券。瀬田と石山では途中下車という扱いで大津線を回っておりました。特急券は浜坂~鳥取駅間のみB特急料金が適用されないため、全体でA特急料金の2,950円に繫忙期で200円が加算され3,150円。なお大阪~浜坂駅間を含むJR西日本のB特急料金は2023年4月1日にA特急料金に統一されるため、乗ってみたい特急がある方早めの行動が吉です。

 

浜坂を過ぎ、いよいよ鳥取へ。ここからは1日1往復しか特急列車がやってこない区間です。俄然「とうとう来たぞ……」という高揚感が支配します。この車両にはすでに私ともう1人*1しか乗っていませんが。

 

列車は鳥取までに6駅を経由しますが、途中岩美駅のみ停車します。むろん、1日に1往復しか特急の来ない駅ということになります。この駅は、岩美駅から4キロの地点にある「岩井温泉」誘致派のため海沿いに敷設する予定だった経路を変更し、当初の計画で通るはずだった浦富村と揉めに揉めたという歴史を持ち、最終的に駅名を桂園時代真っただ中であった当時の桂太郎内閣総理大臣が決めたという逸話を持ちます。

 

果たして1日1往復の特急列車を利用している人はいるのか。乗降を確かめるべくドアから顔を出しましたが、当然ながらゼロ。それもそのはず、すでに時刻は22時15分。もし仮に6時16分に発車する大阪行のはまかぜに乗車している人がいたとしても、帰りは普通列車を利用することでしょう。一応大きい駅ではあるのですが、この時間に停車させる意味がない気もします。

なお、岩美駅の1つ手前である東浜駅よりようやく鳥取県に突入。そして鳥取市はもうすぐそこです。

 

というわけで、大阪駅から4時間27分の長旅を終え、22時31分に列車は終点の鳥取駅に到着。夢だった、深夜のはまかぜによる鳥取入りが叶えられて満足です。

なお、はまかぜは2023年3月のダイヤ改正により午前の1号が鳥取行となり、この5号は豊岡止まりとなるため、このような形式で鳥取に入ることができるのはあと2ヶ月弱しかありません。ご興味ありましたらお早めに!

忙しなかったため大阪駅では撮れなかったLED行先表示を撮影。光が反射せず焦点も合っている写真はあるのですが、「はまかぜ」の部分が「特急はまかぜ」の文字を永遠に流し続ける形式の表示であるため、大雑把な見栄えではこの写真を選ばざるを得ませんでした。

 

さて、鳥取駅の列車はこの特急をもってすべて終了したかというとそういうわけではなく、まだ山陰本線の下り倉吉行最終列車が1本残っています。本日は鳥取で宿泊せず、この列車に乗ってもうちょっとだけ旅を続けます。ほんのちょっとですがね。

 

力強い音を出しながら発車を待つキハ47が出迎えてくれましたが、なんと4両編成。翌日の送り込みを兼ねているのでしょうが、さすがに輸送力過剰です。

なお、この列車は4番のりばへ22時44分に到着する智頭急行経由の特急「スーパーはくと」の到着を待ち、接続を取ってから発車します。この列車は京都を19時35分、大阪を20時06分に出ており、大阪と鳥取2時間38分で結んでいます。つまり、はまかぜは2時間遅く大阪を出た特急にほぼ追いつかれるというとんでもない遠回りをしているのです。常識的な価値観をお持ちの皆さんはぜひスーパーはくとを利用して鳥取に向かいましょう。早く安く着きます。

 

列車はスーパーはくとからの駆け込み客を乗せ出発。4キロかけ湖山駅に到着し、その後もかっ飛ばすかと思いきや1キロちょっとで鳥取大学駅に。湖山よりもさらに鳥取大学に近い駅として1995年に開業した比較的新しい駅です。ご賢察の通り、本日は鳥取大学に進学した同期の家で宿泊させていただきます*2今のところ宿泊費は0円です。

 

おはようございます。時刻は7時、普段は時計がもう1周てっぺんを回るくらいまで寝ているという家主を戸締まりのため叩き起こして出発。12月28日(水)、まず最初に乗る列車は倉吉発鳥取行です。2番列車ですが、昨日乗った謎の4両編成でした。

 

湖山駅で列車交換を行い、鳥取駅に到着するころにはすっかり空も明るくなりました。到着した2番のりばから3・4番のりばに移動すると、ちょうど浜坂発鳥取行の下り列車が入線する時刻でした。

 

次に乗車するのはこちら、4番のりばの因美線普通智頭行です。因美線と聞くと「中国地方遠征」を思い出す冗談だけ本当ですガチ勢の方がいらっしゃるかもしれませんが、皆無だと思われるので補足しますと、因美線智頭駅を境に「鳥取から大阪を結ぶ特急街道のひとつ」と「その結果見捨てられたキハ120単行区間」に分かれています。3月は後者の限界区間を訪問し(というよりさせていただき)、次は特急の通り道のほう*3も行くぞ!と情熱に燃えていたわけです。駅舎の撮影は日が暮れてしまうと元も子もないため、朝早い出発が肝心というわけですね。

 

列車は津ノ井・東郡家の両駅を経由し郡家(こおげ)駅に到着。駅舎は2015年に「ぷらっとぴあ」なる観光案内所などを併設したものに生まれ変わっており、郷愁はあまりありません。「八頭町へおいでやず」ってのはどこの方言なんですかね。

 

待合所には年季の入った番線標が現役で設置されていました。「ばりの②」という表記がたまらなく良いですね。どちらにも列車が停車中ですが、この情報だけでは方面も分からないのが玉に瑕ながらも愛らしいです。

 

ちなみに、右手にある2番のりばの列車が先ほどまで乗車していた因美線下りです。駅舎を撮影している時点でただのきっぷであれば下車した扱いであることは明白なので、再びこの列車に乗車するのは不自然です。では、これからどうするのかというと。

 

次回 思い出の中に冬桜

 

次の"好き"は若桜鉄道へ。

 

余談。鳥取県内の駅を発着する特急券・航空券の写真を貼付することで鳥取県に関する商品が抽選で当たる「とっとり鉄道・航空キャンペーン」に軽い気持ちで応募したところ当選してしまい、選択したスイーツセットが先日届きました。鳥取県の土産商品として知名度のあるものが多数入っており、ドケチ根性が渦巻いたため換算したところおよそ5,000円分相当のお菓子が詰め込まれていました。損得勘定を抜きにしても本当に嬉しいです!また近いうちに鳥取を訪問したいですね。

*1:少なくとも姫路の時点で乗っていた。

*2:鳥大に進むと聞いた瞬間「あ、はまかぜ乗って泊めてもらお」って思いました。

*3:要するに通過される沿線のほとんどは大して栄えていない。