宮城県で夜を明かすのは16年ぶりでした、八川です。
北海道&東日本パスを使用した東北地方倹約旅最終日。始発に間に合うように寝る……のではなくオールを敢行、周辺の西友とミニストップで朝ごはんと昼ごはんを調達し、東仙台駅までやってきました。
東仙台駅の上り始発列車は5時51分と遅めですが、仙台に向かう各方面からの始発列車は概ねこんな時間帯で運転されるようです*1駅には既におそらく毎日この列車を待っている方が何人も。もちろん私が着いた後にも増えていき、最終的には15~20人はいたんじゃないかなと思います。しかし、一部の友人関係と思われるグループ以外から会話が交わされることはほとんどなく、始発列車は2分の遅れをもって入線してきました。
東北本線 普通 仙台行 5:51東仙台→5:57仙台
仙石東北ラインでした。701系たちは一体どこをほっつき回っているんでしょうか。さすがに始発となると座席数の少ないHB-E210系は適していないと思うのですが。
仙台駅に到着。ここから乗車予定だったのは仙石東北ラインです。HB-E210系の乗車3回目にして初めて本領発揮です。乗り換えとも言い難い連絡で6時26分の発車を待ちます。ちなみに緑快速は塩釜までの東北本線内各駅停車、赤快速は塩釜までの途中駅をすべて通過するという違いがあります。
仙石東北ライン 快速 石巻行 6:26仙台→7:28石巻
仙石東北ラインはその名の通り、仙石線と東北本線を結ぶ運転系統。仙台から塩釜までは東北本線、塩釜から転線して仙石線に入り、高城町から仙石線で石巻を、1往復のみさらに石巻線を下って女川までを結ぶという形態をとっています。駅数の多い仙石線と本数の少ない石巻線ではいささか不便であるということで、1時間で仙台に行けるようになりたいという石巻市民の熱望により叶ったそうです。
はじめて仙石東北ラインに乗車してみて思ったのは「とてもよく眠れますね」ということです。オールしなければよかった。
1時間ほど時間を要する瞬きをしている間に石巻駅に到着していました。音鉄の間では「平日と土休日で仙石線の発車メロディが変わる」駅として有名で、特に土休日のSea Greenは日本全国通してもかなり評価の高い一曲です。しかし今日は金曜日、平日であるため人気のないA sea birdが流れます。個人的には比較対象があまりに神々しいだけで、A sea birdもなかなかの名曲だと思うのですが。と言いつつSea Greenのほうが好きですが。
ちなみに、前回宮城に旅行した際に訪れた最北端は松島海岸駅。北海道含めそれより北に行ったことのなかった私は。仙石線の松島海岸~高城町駅間だけ未乗というなかなか気持ち悪い状態で最北記録更新中ということになります。
石巻駅構内にはNewDaysが入店しているのですが、ここでうっかりお土産にせんべいを買ってしまいました。ここから先の移動の中でせんべいをかち割る自信に満ち溢れています。失敗です。
小牛田と女川を結ぶ石巻線は非電化区間であるためキハ110系が担当。入線してきた女川行は奥の細道最上川ラインの愛称をひっさげた専用塗装をしていますがこれは陸羽西線の愛称であり、奥の細道のルートではありますが最上川は山形県内しか流れていません。おそらく陸羽西線の運休*2に伴って持て余しているのかと思いきや、普段から石巻線まで来ているようです。地味に普段の色ではないヒャクトーを見るのは初めてでした。
石巻線 普通 小牛田行 8:24石巻→8:43前谷地
↑普段の色。こちらの塗装には実家のような安心感がありますね。おそらく石巻まではそれなりに人が乗っていたのでしょうが、長時間停車のちガラガラになった車内で移動します。
気仙沼線が分岐する前谷地駅に到着しました。小牛田までは向かわずに、ここからは気仙沼線で北上を試みます。
「谷地」と言えば水に関連する地名だなあ、と思っているとご丁寧に駅名由来の案内が設置されており、やはりビンゴでした。さんずいのついている、見れば分かるような地名はともかく、「女*3」「蛇*4」「赤*5」「柳*6」などの災害を暗に示唆する漢字が多く含まれていることからも、こんどの地震が先人によって地名から見えてきます。
気仙沼線 普通 柳津行 9:03前谷地→9:26柳津
これから乗る気仙沼線は震災によって大きな被害を受けた路線。内陸部である柳津まではこの奥の鉄道最上川ラインの車両に乗車して向かうことができます。列車は和渕、のの岳、陸前豊里、御岳堂に停車。
柳津駅に到着。島式ホームの様相ですが、上り線に転線することもなく1番線に到着。そこには起点である前谷地、石巻線に直通する列車の行先である小牛田方面と書かれており、気仙沼の文字はどこにもありません。
「柳津駅」よりも主張の大きい施設名が書かれた駅舎。
気仙沼線 普通 小牛田行 9:39柳津→9:59前谷地
折り返しの小牛田行がすぐに出るようなので、このまま折り返します。今回も小牛田までは行かず、前谷地で下車。
前谷地から気仙沼までを結んでいるのは鉄路ではなく、バス・ラピッド・トランジット、通称でBRTと呼ばれるバスを使用した交通手段です。お察しの通り柳津から先、気仙沼までの区間は鉄路での復旧が断念され廃線となり、現在は大部分を専用道としたBRTが前谷地・柳津と気仙沼を繋いでいます。
気仙沼線BRT 赤岩港経由 気仙沼行 10:08前谷地→12:31気仙沼
前谷地駅まで乗り入れてくるのはごくわずかで、柳津駅始発の便が多く設定されています。前谷地から柳津を走るBRTは道中の鉄道駅を無視し、30分もの間停留所のない異常バスとして一般道を走ります。しかも客ゼロ。夜に乗ればさながらきさらぎ行です。
柳津を過ぎるとぼちぼち人が乗ってきました。気仙沼に向けて徐々に増えていくのではなく、途中の停留所で乗っては降りての繰り返しという感じでした。清水浜駅から専用道に入り、本吉駅から大谷海岸駅付近までは海寄りであった鉄路から山寄りの国道にシフトし、ここから本数が大幅に増加します。道中には鉄道時代には無かった新駅もちらほらと。
鉄道趣味人としては鉄路で繋がれていたほうが嬉しいと思う反面、地域に寄り添った公共交通の在り方としてはこの形態が適しているのだろうなとも。
気仙沼駅に到着。1・2番線の線路を剥がし、BRT専用道として敷き直された駅構内に鉄道開業150周年の旗がなびいていました。
……乗り心地最悪だったが?
すみません、あまりの運転に我慢できませんでした。揺れまくるわ、体は上下に弾むわ、公道でやったら確実に追突されるブレーキで停まるわ……はっきり言って今まで乗ってきたバスの中で最悪でした。乗り物酔いの方が乗車したら酔い止めが効かないレベルです。運行委託のミヤコーバス、名前を忘れることはないと思います。
当駅は大船渡線との乗換駅。当駅を境に一ノ関方面は鉄道、盛方面はBRTという形で分断されています。このあと乗車する上り列車までは時間が空くため、東仙台駅で買った昼ごはんを食べて周辺を適当に散策することに。
観光案内所でもらったパンフレットをもとに、気仙沼線で来た方向とは逆に海へ向かって駅前通りを歩いていきます。これは古さしか感じない新町停留所。
道中には津波がどの高さまで来たかを示す掲示が。パンフレットで自分の身長と比較してみると即死レベルの高さで街を襲っていたことが分かります。
新聞の自動販売機では、甲子園準決勝で東北勢が対戦するというおそらく史上初の事態を大々的に報じている新聞が売られていました。結果的に仙台育英が勝ち、そのまま東北で史上初の優勝を果たしましたね。おめでとうございます。
やまと駐車場←ーメンを通り過ぎると、目的地である「浮見堂」は目と鼻の先です。
100人中100人が船舶関連の私有地だと思うであろう空間に突入します。このコンクリートは津波警報が発出されると自動的に閉まる仕組みになっている防災壁であり、ここから先も公道になっています。付近の公園を工事している方にも聞いたので間違いありません。
浮間堂に到着。滋賀県の浮御堂を模して建てられたのがはじまりで、現在の遊歩道は2020年に再建されたものだそうです。
少し先に行ったところには恵比寿像が。どうやら珍しいらしい「立ち恵比寿」の像だそうです。一説には、神様のところへ通っている最中に船を漕ぐアレ*7を落としてしまい、やむなく足で漕いでいるところをサメに噛まれ足を悪くしたためほとんどの像では座った姿であるそうです。そんなエピソードがあったとは……
内湾(ないわん)の景色を満喫したところでそろそろお時間。来た道を戻ります。
というわけで、やって来たのは大船渡線BRTの内湾入口(八日町)駅。2022年3月に開業したばかりの新駅です。歩くのが面倒になったので、道中にあったこの駅に逃げ込みました。乗車予定の一ノ関行には余裕で乗り継げるダイヤになっています。
大船渡線BRT 快速 気仙沼行 13:48内湾入口→13:53気仙沼
1区間だけで判断するのはいささか早計かもしれませんが、こちらのBRTは大変快適な乗り心地でした。大船渡線BRTは岩手県交通が委託されているそうで、ミヤコーバスに対する印象が悪くなっていくばかりです。さすがにあの運転手がハズレだっただけだと思いますが。
大船渡線 普通 一ノ関行 14:21気仙沼→15:40一ノ関
大船渡線からはキハ100系に乗車。石巻線のキハ110系とは車体長が違いますが、見てくれは同じにしか見えません。あちらにはヒャクトーという呼びやすいあだ名がありますがキハ100系にはソレがありません。なんて呼びましょう。ヒャックーとか?
気仙沼駅から1駅先、新月駅より岩手県に突入します。むろん人生で初めての岩手県です。鉄路では最もマイナーな攻め込み方だと思われます。
東北本線 普通 盛岡行 15:44一ノ関→16:22北上
寝ていると一ノ関に到着、ここからは東北本線に乗り換えます。一ノ関より先の区間は盛岡車両センターに所属する紫色の701系が幅を利かせている区間になります。今まで緑色の701系しか見たことがなく、こんな遠くまで来たのかとちょっと感動です。
北上駅で下車、今回の旅では東北本線はここまで、ここより北上することはありません、北上だけに。
北上線 普通 横手行 16:40北上→17:23ほっとゆだ
ここからは北上線で北上しようと思いますが、地図を見ると北上するのは北上からほんの少しの区間であとは西に向かうようです。北上線は北上せずに北上に到着するということなんですね。
ほっとゆだ駅で下車。もう2駅先に行けば秋田県に入りますが、旅程の都合で今回は断念。駅舎に併設されており、列車の時間帯に合わせて点灯することで有名な信号機がある「ほっとゆだ」に入浴しました。地元利用の方が多く若干肩身が狭かったですが、良いお湯でした。
北上線 普通 北上行 18:53ほっとゆだ→19:39北上
あとは来た道を戻ります。ほっとゆだ始発のヒャックーで北上へ。
東北本線 普通 一ノ関行 20:15北上→21:00一ノ関
北上から南下します。今度は北上から北上したいですね。
東北本線 普通 小牛田行 21:06一ノ関→21:52小牛田
一ノ関から小牛田行に乗り換え、気仙沼を経由してきたためここからは初めて乗車する区間になります。Discordで通話中の識者曰く所定701系の運用を代走しているようで、自動放送のROMが違うためまあまあ貴重な光景らしいです。ちなみに上り最終だったり。
小牛田に到着、陸羽東線は鳴子温泉行、石巻線は前谷地行の最終列車が停車中。私はこのまま東北本線を上り、仙台行最終列車に乗り継ぎます。しかし、この列車では本日の宿泊地にたどり着くことはできません。では、どうするか。
東北本線 普通 仙台行 22:07小牛田→22:26松島
走ります
松島駅から、このあたりで東北本線の至近を走る仙石線の高城町駅までダッシュします。時間はギリギリ、間に合え仙石線!!
これは通話中にダッシュを始めた私を嘲笑する皆さま。「走ってるw」「面白くなりそう」「青葉通り行き、3駅手前」など反応はさまざま。
ダッシュする私。この歩道橋を渡って向かい側の道を直進するのが推奨ルートなのですが、なんと歩道橋の向かい側が通行止めになっており通り抜け不可に。国道は渡れませんという張り紙、そのまま横断するなって意味かと思いきや歩道橋もアカンでということでした。あーあ。
その後も真っ暗闇の中、休んだり小路に入りそびれたりしているとあおば通行が高城町駅に到着。しかしこの時点で私もすでに高城町駅が視野に入るところまで来ていました。果たして結果は……?
乗 車 失 敗
無情に下り方面を指す矢印。あおば通行に乗車することはできませんでした。一時的に盛り上がるも沈黙するオタク達。
石巻駅付近に快活CLUBがあることを嗅ぎ付けてくださった方もいましたが、すぐさま鍵付完全個室が満席という事実が発覚*8。ひとまず石巻行があるので高城町で夜を明かす必要はなさそうですが、個室がないとなると厳しいですね。
ところで、私はどこに宿泊するために走っていたのでしょうか。
仙石線 普通 石巻行 22:45高城町→23:22石巻
石巻です。
石巻の個室、予約取ってます。
いかがでしたか。騙されましたか。殺しますか。トトロ見てたほうが良かったですか。
私はあおば通行に乗るとは一言も書いておりませんし、乗ることができなかったのは石巻に宿を取っていたからです。最初から時間も余裕でしたし、あおば通行にもこの通り間に合っています。
そもそも陸前浜田・松島海岸の2駅以外であればそのまま仙台で東塩釜行に乗り換えることができるため、最初からあおば通行に乗車する必要性などほぼ皆無なのですが、行先を告げずに飛び出した結果あおば通行に乗ることになっていたので騙してみました。ピースピース。
陸前山下駅ではEast-iという名の勝利の女神が私に微笑んでくれました。生きてると良いことありますね。
ゆうゆうと石巻駅に到着。乗車した電車はセンM-19、南武線を経て転属してきた唯一の車両です。南武線のE233系が置き換えた車両のうち1200番台だけは現役時代に1度も乗ることができなかったので、心残りが晴れました。
3番線には深夜の女川行に充当されたのち、当駅まで回送された仙石東北ラインです。昨日小牛田行として乗車したのと全く同じ車両です。どんな運用組んでるんでしょうか?その上には何も表示されていない発車標。見知らぬ土地でのこの光景はやはり気分が高揚しますね。
というわけで、最終日となる明日は石巻駅からスタートです。唯一の失敗は朝に買ったたこせんべい。どう考えても今日買うべきではありませんでした。ひょっとするとすでにもう割れている可能性がありますが慎重に持ち帰ります。
あれ、そういえば北海道&東日本パスって今日までだったはずでは……?
次回 常磐線を走り抜けて
ただ帰るだけの薄味回です。